2011年12月9日の記事より
実際は、1998年5月号に掲載しました。
「温故」ふるきをたずねて
「知新」あたらしきをしる
今回は、その中から、1954年から1965年まで活躍した
荻村伊智朗選手、1955年から1957年までの田中利明選
手、1959年から1963年までの松崎キミ代選手、1961
年から1965年までの両澤正子選手(旧姓関)、1967年
から1973年まで活躍した長谷川信彦選手を紹介させていた
だきます。
ちなみに、広辞苑(岩波書店)には、「温故知新」について、
次のように書いてあります。
「昔の物事を研究し吟味して、そこから新しい知識や見解を得
ること。
古きをたずねて新しきを知る」
話を変わりますが、ここで後藤新弥氏の文章を、あえて全文紹
介させていただきます。
水連10則
温故知新という。
中学時代、口の両端に指を引っかけて、口を横広がりにして
「温故 知新」をウンコと発音した。
出たての大便をチェックすると、何を食べたかだけでなく、
健康状態や、心理状態もわかってくる。
ウンコをかいで、新しきを知るという意味だと、試験のとき、
ふざけてそう書いた。
話のわかる先生で、「なかなか科学的である。君のような生
徒はヘソ曲がりだから、便も曲がっているのだろう。よく調
べなさい」
と、赤筆が入っていて、半丸をくれた。
名古屋で、水泳の日本選手権を取材している。ばかなことを
思い出したのは、プラグラムに、1939年(昭和14年)
の水連機関紙に掲載された、水連初代会長・末広厳太郎氏の
「水連10則」が載っていたからだ。
「まず体を作れ、技巧だけではタイムは伸びない」に始まっ
て、「スタートとターンは、泳ぎそのものより重要である」
「スランプは心理でなく体力に原因がある」「あがる癖は、
精神訓話では解決しない」「いつでも柔軟に泳げるように、
癖づけることだ」
(以上抜粋)
水泳に詳しい方ほど、驚かれるだろうが、新記録続出の今
大会においても、「日本の課題はスタートとターンである」
と言われている。
半世紀以上も前の確かな視点が、飛躍の基礎をつくったの
だ。
今季世界2位の好記録を出した男子100㍍平泳ぎの林亨
(明野SP)のコーチ、井上浩二氏に話を聞いた。
新日鉄が大分に造った市民プールで、同氏も元は同社の生
産技術部にいた。
プールの底も浅く、エリートのクラブではないから、1日
2時間以上はプールを占有できない。
「そのハンディをどう埋めるかがカギ。選手はたぐいまれ
な集中力で、私は短時間で効率をあげるシステムを考案し
て」
体力を重視する。
筋トレは大分大の清水富弘助教授が担当し、林が自宅でや
れる、ゴムチューブによる強化を取り入れている。
「上体を大きく浮上させて、水に乗って強く脚をかく」
独自の泳法を磨くため、チューブを引きながら、実際と同
じ動作を繰り返す。
水連の科学班にデータやフォーム分析を依頼し、井上氏
が徹底的に分析する。
この日の決勝で2コースがフライングして、林も動揺しか
けるシーンがあったが、プレッシャーへの強さを見せた。
「短時間勝負の練習に慣れているからでしょう」
ハンディを一つ一つプラスに変えていく。くだんの「水連
10則」に、ことごとくマッチしている。
「そうなんですよ、大事なことは昔も今も一緒なんですよ」
と井上氏は笑う。
「第10則」にこうあった。
「よき練習は、よきコーチによってのみ行われる。しかし、
自ら工夫することなき選手は、上達しない」
註・林は、バルセロナ五輪で健闘。100㍍平泳ぎで4位
に入賞した。
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